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現代数理統計学の基礎 7章 問2 (1)

検定が来年になったため非常にゆっくりなペースとなっていますが、今回は7章の問2。

 

複合仮説の尤度比検定の問題ですね。

なかなか解答も理解しづらく、説明いれてくとかなり長くなってしまいました、、。似たような問題が今後も続くため今回は丁寧めに説明を考えています。

 

目次:

 

 

1、尤度比検定の棄却域を求める

まずは帰無仮説H_0:\mu\leq\mu_0における尤度比検定の棄却域を求めます。

 

尤度比検定は

尤度比=(帰無仮説下でのMLE<最尤推定量>)/(特に指定されない場合のMLE)を用いる検定でした。

 

尤度比検定についての説明記事はこちら↓

medibook.hatenablog.com

 

そこで今回の複合仮説において帰無仮説下のMLEを考えると、\mu_0もしくは\hat\mu(制限をつけない通常の最尤推定量)のどちらか小さいほうとなります。

 

よって式で表現するとしたら帰無仮説下のMLEを\hat\mu_0とすると、\hat\mu_0=min(\mu_0, \hat\mu)ですね。どちらが帰無仮説下のMLEになるかは場合分けすればよいと言えます。

 

肝心の尤度比の式は、尤度関数をL(\mu)とすると

\frac{L(\hat\mu_0)}{L(\hat\mu)}=exp\{-\frac{n}{2\sigma^2}(\bar X-\hat\mu_0)^2\}

となります。

 

先ほどの場合分けをして代入してみると

\hat\mu\leq\mu_0の場合

\hat\mu_0=\hat\muとなります。これを尤度比の式に代入すると

 

exp\{-\frac{n}{2\sigma^2}(\bar X-\hat\mu)^2\}=1

これは\bar X=\hat\muであることによります。

 

これはつまり、帰無仮説下のMLEとそうでない場合のMLEが一致してしまう(尤度比が1)ので、そもそも帰無仮説の棄却ができません。

 

公式の解答では詳しく書いてはいないですが、この場合はそもそも棄却域が存在しないと言うことで良いのではないでしょうか。

 

\hat\mu\geq\mu_0の場合

この場合、\hat\mu_0=\mu_0となります。これを尤度比の式に代入すると

 

exp\{-\frac{n}{2\sigma^2}(\bar X-\mu_0)^2\}となるので、-2をかけて対数をとるとカイ二乗分布に従うことを利用して

\frac{n}{\sigma^2}(\bar X-\mu_0)^2\sim\chi_1^2

となります。

 

解答にあるように\hat\mu=\bar X\geq\mu_0なので

尤度比検定の式は、有意水準がα%となる分位点z_\alphaを用いて

\sqrt{\frac{n}{\sigma^2}}(\bar X-\mu_0)\gt z_\alphaとなります。

 

ここまででようやく尤度比検定の式が求まりました。

 

2、確率上界の証明をする

あとは複合仮説の場合、P値の定義として、確率上界が

sup_{\mu\leq\mu_0}P(\sqrt{\frac{n}{2\sigma^2}}(\bar X-\mu_0)\gt z_\alpha)

となることを示さないといけません。

 

この辺は個人的にとてもややこしかったので以前に一度記事を書きました↓

medibook.hatenablog.com

 

過去記事と同様に進めてみると

\sqrt{\frac{n}{\sigma^2}}(\bar X-\mu_0)\gt z_\alphaをまず\muを用いた式に変形します。

 

\sqrt{\frac{n}{\sigma^2}}(\bar X-\mu)+\sqrt{\frac{n}{\sigma^2}}(\mu-\mu_0)\gt z_\alpha\\\sqrt{\frac{n}{\sigma^2}}(\bar X-\mu)\gt z_\alpha-\sqrt{\frac{n}{\sigma^2}}(\mu-\mu_0)

 

ここで

\sqrt{\frac{n}{\sigma^2}}(\bar X-\mu)\sim N(0,1)

となることと

-\mu+\mu_0\geq 0

と利用して、上記の式の確率をとると

 

P\{\sqrt{\frac{n}{\sigma^2}}(\bar X-\mu)\gt z_\alpha-\sqrt{\frac{n}{\sigma^2}}(\mu-\mu_0)\}\\\leq P\{\sqrt{\frac{n}{\sigma^2}}(\bar X-\mu)\gt z_\alpha=\alpha

となり、確率上界がαとなるような検定であることが証明できました。