脳内ライブラリアン

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医療、統計、哲学、育児・教育、音楽など、学んだことを深めて還元するために。

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我が家にNASを導入してみた(Synology ds220j)

我が家にNAS(network attached strage)を導入してみました。

 

NASはいわば自宅で個人用に作れるクラウドみたいなものであり、PCのバックアップや録画したテレビ番組の保存、外出先でのそうしたデータの利用に大変便利です。あまりにも疎くて全然存在を知りませんでした。

 

今まではバックアップもろくに取らない危険な生活をしてきたのですが、ここ最近裁断してpdf取り込みしている書籍がどんどん増えており、「これを失ったらショックがデカすぎる、、、」と思ったので購入しました。

 

メーカーは多数ありますが、台湾の企業で世界的にシェアも大きいsynologyのds220jにしました。あんまり特殊な機能が要らなくて、PCなどのファイルのバックアップを取るだけという人にはこれでいいんじゃないでしょうか。

 

 

NASキットというハードディスクを自分で買って取り付けるタイプと、最初から取り付けられているタイプがありますが、取り付けるのは死ぬほど簡単だったので(ドライバーでネジ閉めるだけ)、自分で容量やハードディスクを選べるキットがおすすめですね。

 

ハードディスクは4TBを2つ。

RAID機能という物があって、互いの2つのハードディスク同士がバックアップをとってくれるので片方が壊れても安心です。

 

設定は思いのほか簡単で、Wifiの無線ルーターと本体をLANケーブルで繋ぐだけ。あとはパソコンを立ち上げて、サイトにアクセスし、設定をしてくれます。

 

PCは大したデータ量がないので、そこまでバックアップも困りませんが、主にiPhoneipadに大量のファイルがあるのでその辺のバックアップを取りました。

 

iPhoneはds fileという専用のアプリがあり、そこから写真のバックアップは可能です。8000枚くらいあったので流石に時間がかかりました、、、。

 

DS file
DS file
開発元:Synology Inc.
無料
posted withアプリーチ

 

iPadはdocuments by readdleというアプリで管理してますが、こちらもアップロード先として簡単に指定が可能です。パソコンの方からIPアドレスを調べてWindows SMBというのを指定すればできます。こちらのブログを参考にしました。

rui-log.com

 

ようやくちゃんとバックアップが取れるようになり、ひとまず安心です。

便利な時代になったなあ。

中級者から上級者になれる着実な英語の勉強法『英語独習法』レビュー

Twitterでも書きましたが、最近こちらの本を読みました。

 

 

今までもかなり英語の学習法の本は読んできたつもりですが、認知科学をベースにした今まで見てきた英語学習法とは一線を画する内容であり、ぜひともお勧めしたいです。

 

というわけで、内容の一部を要約しつつ感想を交えて書いていきます。

 

目次:

 

言語学習はエビデンスが難しい

普段医学のことでエビデンスエビデンス言っていると、こうした言語学習の分野でもエビデンスに基づいた確実な方法論を求めてしまうのですが、なかなかそれは難しい話です。

 

言語の学習はその習得度合いの定量化も難しく、また普段の生活でも常に言語を使うため、交絡因子もありすぎます。さらに習得には長い時間と年数を要するため、そんな長期に実験に付き合ってくれる人なんか中々いないわけですね。

 

そうなると、個人の体験談やらカリスマ講師の学習法やらがどうしても溢れ返りがちなのですが、英語を学ぶ環境や目的が違えばまるで通用しないことも多いので、正直あまり頼りにはなりません。

 

実際、自分も何冊か過去に学習法の本を買っていますが、未だかつて継続できたものや効果を感じたものはあまりありません。結局、英語力が最も向上したと感じたのは、TOEFLの試験勉強をしていた時とその際のskype英会話、その後の数ヶ月の留学くらいでした。

 

では、勉強方法として信頼に足るものは何なのかというと、個人の体験談ではなく、言語の習得方法についての機序と論理の積み重ねがしっかりしており、納得できるもの、ではないかと思っています。

 

言語学認知科学の分野では、さまざまな実験が行なわれ、いかにして第二言語が習得されていくのかが検証されています。どのように第二言語を学んでいくのか、だけでなく「どう間違えるのか」にも着目することで、その機序を少しずつ解きほぐしていくわけです。

 

以前購入した『言語はどのように学ばれるか』*1にも興味深い第二言語学習者の特徴が多く記載されていましたが、この本はあくまで教育者などに向けたものなので、学習者向けではありませんでした。

 

今回紹介する『英語独習法』は学習者向けであり、かつ認知科学に基づいた言語習得の機序を考慮して、具体的な方法を提示しています。その点で、他に類をみない面白みの溢れる一冊となっています。

 

スキーマの概念

本書の核となるのはスキーマという概念です。

 

スキーマとは認知心理学で用いられる概念で、ある事柄に対する枠組みとなるような知識を指します。

 

言葉におけるスキーマはどういうものかというと以下のように述べられています。

 

ことばについてのスキーマは、氷山の水面下にある、非常に複雑で豊かな知識のシステムである。スキーマは、ほとんど言語化できず、無意識にアクセスされる。可算・不可算文法の意味も、スキーマの一つなのである。(『英語独習法』第2章より引用)

 

要するに、意識されていない言語の知識というものですね。

 

日本語が母語であれば日本語を話すとき、何も考えずにすらすらと言葉が出てきます。例えば、「に」「が」「は」「を」などの助詞をどう使い分けるのか。そういったことは何も考えずにできています。

 

普段は何も考えていませんが、外国の人や子どもがこうした助詞を間違えると、すぐに気がつきます。

 

3歳の長男がよく「ママにやってね」「パパにやるんだよ」と言いますが、大抵これは「に」と「が」が間違っています笑

本当はママやパパにやって欲しいことがあって、言っていることが多いです。

 

こうした明文化されない知識が言語の能力を支えていることは、以前からすごく気になっていたので、前にも記事に書きました。 

medibook.hatenablog.com

 

本書では第二言語母語スキーマのズレを直し、いかにして第二言語スキーマを学ぶかに主眼が置かれています。

 

コーパスを使ってスキーマを磨く

つい日本語と英語の単語を1対1対応させてしまって覚えようとすることが多いですが、完全に対応する単語はあまりなく、ほとんどスキーマにズレがあることが多いです。

 

本書での例を一部持ち出すと、例えば"shy"という単語は日本語で「恥ずかしい」と訳されることもありますが、これはあくまで性格であって、ある場面で恥ずかしい思いをした、というときには使えません。

 

他にも同様の表現にashamed, embarrassedなどあるわけですが、この辺の違いわかりますでしょうか・・・?

 

そんなとき、日本語では違いを表現できない単語ごとのスキーマの違いを見つけるために、具体的な方法として紹介されているのがコーパスを用いた方法です。コーパスとは、言語の中で使われる単語の種類や頻度、共起表現(どの単語が一緒に用いられやすいか)を統計学的に解析して特徴を探し出す方法論のことを指します。

 

これを使うことで単語ごとのスキーマを磨いていきます。具体的に本書で必要性が説かれている要素は以下の6つです。

 

①その単語が使われる構文

②その単語と共起する単語

③その単語の頻度

④その単語の使われる文脈(フォーマリティの情報を含む)

⑤その単語の多義の構造(単語の意味の広がり)

⑥その単語の属する概念の意味ネットワークの知識

(『英語独習法』第5章より引用)

 

さて、日本語の単語でなんでも良いので思い浮かべてみてください。実は大抵の単語についてこの要素の全てを知っていることに気づきます。

 

 

これを磨いていくことが第二言語でも同様に自由に言葉を使えるようになる鍵となるわけです。

 

コーパスベースとしたツールとして本書で紹介されているものの一つにSkeLLがあります。

SkeLL

 

これは今まで知りませんでしたが、めちゃくちゃ使い勝手がいいです。

 

共起表現となる単語がざっと並び、例文もそれぞれについて多数見ることができます。また、関連するワードをざっとみることもできるので、単語ごとの違いを学ぶには十分役立ちます。

 

今までは以前紹介したCOCAを使っていましたが、ログインが必要だったり、個人の使用はアクセス回数に制限があるので、SkeLLの方が手軽で良いですね。 

medibook.hatenablog.com

 

こうしてコーパスを用いることでスキーマを磨いていくわけですが、その中で大事なのは母語との違いを「意識」して母語との単語間や第二言語の間での単語間を「比較」していくことです。具体的な要点については、本書中にまとめられています。

 

①自分が日本語スキーマを無意識に英語に当てはめていることを認識する。

②英語の単語の意味を文脈から考え、さらにコーパスで単語の意味範囲を調べて、日本語で対応する単語の意味範囲や構文と比較する。

③日本語と英語の単語の意味範囲や構文を比較することにより、日本語スキーマと食い違う、英語独自のスキーマを探すことを試みる。

スキーマのズレを意識しながらアウトプットの練習をする。構文のズレと単語の意味範囲のズレを両方意識し、英語のスキーマを自分で探索する。

⑤英語のスキーマを意識しながらアウトプットの練習を続ける。

(『英語独習法』第4章より引用)

 

ものすごく地道な作業になるわけですが、こうした言葉への深い理解は、言語の上達のためには欠かせないと思います。

 

実際のところ、日本語が得意な外国人の方と話してみると、本当に言葉一つ一つの理解が深いことを感じます。言葉の違いについても敏感で、ちょっとした表現でも何が違うのか具に聞いてくることが多い印象です。自分たちはむしろ無意識なので、説明しようとすると苦労しますが(笑)それぐらい意識をしっかり向けることが言語の上級者への道なのだと思います。 

 

リスニングにもスキーマが活きている

この辺の話を書くとリーディングやライティングだけに役立つ話なのではないかと思われがちですが、本書にも指摘されているようにリスニングにもこのスキーマは重要です。

 

なぜなら、言葉を聞くときも多くの場合は次の単語を予想しながら聴いているからです。

 

予想しなくたって日本語なら聞けるよー、と思いがちですが、日本語の例で考えてみても納得がいく話だと思います。

 

個人的にいつも全く聞き取れないのはMr. Childrenの歌ですね笑

正直歌詞見ないと何を言っているか分からない部分が多々あります。

 

歌の場合は大抵日常的な言葉と異なり、全然予想しない単語が出てくるので、まるで聞き取れないわけですね。「変声期みたいな吐息でイカせて」なんて普段の生活では絶対言いません笑そんなこという人がいたら多分、変態か変態のどちらかです。

 

スキーマの知識があれば次に来る表現や周りの単語から言葉を類推しやすくなるので、聞き取りも楽になると思われます。

 

こうした事情から、本書では動画などの音以外の背景知識がある程度あるものから始めた方が、周辺知識が多く、認知的な負荷を減らしてリスニングができるため、そうした方法を推奨しています。確かに経験したことのないアメリカのキャンパスライフを主題にしたリスニング問題などでは、そもそもどんなものか知らないので、単純な聞き取り以外の負荷が増え過ぎてしまいますね。

 

仕事で必要な中級者〜上級者向けの一冊

この本で紹介されている内容というのは仕事として英語を発信する必要のある人向けの、楽ではないけれど着実な方法論になっていると思います。

 

コーパス自体がそもそもある程度の英語能力がないと(使い方も英語ですし)分からないので、本当に英語を学びたての人がやる方法ではないですね。

 

ただ、ある程度の文法と単語を学び終えてからのステップアップには確実につながるやり方でしょう。ここでは紹介しきれてませんが、具体的にどうやってコーパスを使って学ぶのかを実践編として本の後半で、実例の単語を並べながら説明しています。

 

自分の英語力も学生時代のまま止まっているので、今後またこの本のやり方を参考にしてぜひ勉強したいと思います。とりあえず、統計検定と専門医試験が終わってからにしますけどね(汗

 

参考文献、おすすめ本・サイト

*1『言語はどのように学ばれるか』

『外国語学習に成功する人、しない人』 

こちらは第二言語習得論について学術的に得られた知識を一般向けに描いた本です。本書のような具体的な方法論はそこまで充実してませんがおすすめです。

ポリグロットライフ | 言語まなび∞ラボ

こちらのブログは先程のスキーマのことも含めて、言語学習について方法論をまとめており、内容も充実されてますのでおすすめです。

小ネタ集<コーシー・シュワルツの不等式、算術平均・幾何平均・調和平均、二項定理>【統計検定1級対策】

もともと数学は大の苦手分野なので、数学的な有名定理も全く馴染みがないのですが、統計検定の問題において必要とされることがあるので、自分向けの備忘録としてまとめておきます。

 

ひとまず目についたところでコーシー・シュワルツの不等式、算術平均・幾何平均・調和平均、二項定理についてです。証明とかはもっと遥かにわかりやすいサイトがいっぱいあるのでやりません笑

 

目次:

 

コーシー・シュワルツの不等式

コーシー・シュワルツの不等式とは以下のような式で表されます。*1

(\sum_{i=1}^nx_iy_i)^2\leq(\sum_{i=1}^nx^2_i)(\sum_{i=1}^ny_i^2)

 ベクトルの話として出てくることも多いようですが、数理統計学で見るとこの形が使いやすいと思われます。

 

具体例

統計検定1級、2016年統計数理の問3、線形モデルにおけるβの不偏推定量のうちどれが最も分散が小さいかを求める問題で、利用されていました。

 

また、相関係数の絶対値が1以下となることはコーシー・シュワルツの不等式から導き出せます。*2

|Corr(X,Y)|\leq1

 

相関係数の定義に戻ると共分散を用いて

Corr(X,Y)=\frac{Cov(X,Y)}{\sqrt{Var(X)Var(Y)}}

よって証明したい最初の不等式は

\{Cov(X,Y)\}^2\leq Var(X)Var(Y)

これを実際の式に直すと

(E[(X-\mu_X)(Y-\mu_Y)])^2\leq E[(X-\mu_X)^2]E[(Y-\mu_Y)^2]

これはコーシー・シュワルツの不等式から導き出せますので、証明できました。

 

算術平均・幾何平均・調和平均

正の実数a_1, a_2,...,a_nにおいて

算術平均≧幾何平均≧調和平均

が基本的に成り立ちます。*3

 

そもそも算術平均とか幾何平均とかなんやねんという自分のような素人用に簡単に書きます。

 

算術平均は一般的に平均と呼ばれているもので

\frac{a_1+a_2+...+a_n}{n}

で表されます。

 

外れ値の影響を受けやすいのが特徴で、大きく他と異なる数値がある場合にそちらに引っ張られます。*4

 

続いて幾何平均

^n\sqrt{a_1a_2...a_n}

と表されます。

 

対数の算術平均を指数変換したもの、という事もできます。

つまり

\frac{loga_1+loga_2+...+loga_n}{n}

を指数変換したということですね。 

 

偏った分布を左右対称に近づける性質があるので、算術平均よりは外れ値に強くなります。*4

 

最後に調和平均です。

\frac{1}{\frac{1}{n}(\frac{1}{a_1}+\frac{1}{a_2}+...+\frac{1}{a_n})} 

逆数の算術平均をとり、その逆数をとります。

 

使われる例として、平均速度の話*3やピタゴラス音階*5においてハーモニー(調和)を生み出す波長の関係性などがあります。あとは投資においてリスク低減すると言われているドルコスト平均法の平均取得単価*3なんかも調和平均の形をとります。

 

こちらも2016年統計数理の問3で使われてましたので、知っておいて損はないかもしれません。大小を決める問題では応用が効く場合があると思います。

 

二項定理

二項の累乗を表す式を展開する際に役立つ公式です。

(a+b)^n=\sum_{k=1}^n{_nC_k}a^kb^{n-k}

と表されます。

 

2項分布の総和が1になる(=確率変数である)ことを示す際に用いられます。*2

Bin(n,p)で考えると

\sum_nC_kp^k(1-p)^{n-k}=(p+1-p)^n\\=1

と導けます。

 

似たものに多項定理というものもあります。

(p_1+p_2+...+p_k)^n=\sum_{x_1+x_2+...+x_k=n}\frac{n!}{x_1!x_2!...x_k!}p_1^{x_1}p_2^{x_2}...p_k^{x_k}

と表されます。

 

こちらは多項分布の総和が1になることに用いられます。

  

参考文献:

*1 

コーシー=シュワルツの不等式 - Wikipedia

*2

『現代数理統計学の基礎』

*3

https://mathematics-pdf.com/pdf/agh_means.pdf

*4

『入門統計学 検定から多変量解析・実験計画法まで』

*5

調和平均とハーモニー、と新たな謎

内科医が知っておきたい精神科のエッセンス『状況別に学ぶ内科医・外科医のための精神疾患の診かた』

ちょっと前に楽天お買い物マラソンで買い漁った積読本を読み進めてます。

 

医学書なので臨床医向けですが、おすすめです。

 

頻度から考えると普通の内科・外科でも十分精神疾患の方に出会うと思うのですが、脳神経内科をやっていると特に多く出会うと思います。そして、その中でも難しいのが、いわゆる心因性の反応による麻痺・痺れなどですね。

 

本当に心因性なのかどうかを見極めるのも難しい時がありますが(世の中本当に不思議かつマイナーな神経疾患もある)、加えて心因性だと判断した時にどうしたら良いのか迷うこともあります。

 

また、神経の難病においては抑うつ傾向になることも多く、そんな方達にどのように接していけば良いのか悩ましい時もあります。

 

そんなわけで今回はこの本を買ってみました。

 

内容をざっと紹介してみます。

 

章ごとの本の概要

第1章では内科医が出逢いがちな精神疾患の患者のシチュエーションごとに解決策が提示されます。例えば、「外来で気分が落ち込み気味で体重減少している患者さん」とか「自殺未遂で救急搬送される患者さん」とかですね。具体例から入るアプローチで、個々の疾患などの詳しい話は後の章で説明されていきます。

 

第2章は診察、診断、治療薬、疾患など精神科の基礎知識が説明されます。

 

まずは精神科の面接について。精神科における診察と診断について説明されます。伝統的診断と操作的診断の話は実はよく知りませんでした。

 

疾患名がICDとDSMと色々ありすぎて、どの疾患がどういう概念か分からなくなり、精神科の先生からの紹介状に書いてる疾患が正直なんなのかよく分からなくなりがちですが、これを見て多少スッキリしたように思います。この辺は後の各疾患を説明した章でさらに補足されます。例えば、身体表現性障害、身体症状症、変換症、転換性障害とか皆さん違いが整理できていますか?私はできていません(汗

 

続いては、向精神薬の使い方。エビデンスに基づく話もちらほらありますが、基本的にはエキスパートオピニオンとしての使い心地の記載です。

 

実際問題として特に定量評価のできない精神科領域の話だと、エビデンスと言っても限界があるので、こうした具体的な話が書いてあるのは有難いと思います(もちろん多少の意見の偏りはあるでしょうが)。使わなければいけない時に目安になるものがないのはちょっと臨床医としては困るところなので、実臨床で使うにはこうした意見が重宝します。

 

最後に各疾患の基礎知識。神経内科は幻覚妄想のある脳炎認知症患者などを普段相手にいますが、そうなると時折鑑別が必要になるのは統合失調症。基本的な知識は知っておきたいところです。書いてある内容は「そういえば、国家試験の時にやったなあ」という内容も多いですが、改めて経験を踏まえてみると、より理解はしやすくなっています。

 

うつ病、身体表現性障害は神経内科の臨床でも出会う頻度がある程度高いです。特に身体表現性障害の患者さんはどう接したら良いのか。そして変換症、作為症、詐病の違いは何か。こういった具体的な話をもってきているので非常に役に立ちます。

 

ちなみに、患者さんへの接し方は以下のように述べられています

 

・身体症状に対する苦痛があることを認め、患者のおかれている状況を理解する

・「異常は何もない」よりも「すぐに治療を要する重篤な病気はない」という趣旨の説明をする

・考えうる病態モデルについて説明する

・焦って結果を出そうとしない。ゆっくりペースでよい

・自身の陰性感情を自覚して、それが出ないように心掛ける

・安易な処方はしない。薬を出す場合には単剤で標的症状を明確にしておく

・経過中、本当に身体因の可能性がないかどうかという意識を常に持っておく

(堀川直史 身体表現性自律神経機能不全 こころの科学2013;167:33-5)

 

考えてみると、「結構自分もやってるなあ」ということでしたが、より意識してやっていこうかと思います。

 

第3章では精神科との連携ということで、どのような精神科のある病院に繋いでいったら良いかが語られます。

 

最後の第4章は精神疾患へのよく問われるQ&Aの内容となっています。

 

エビデンスだけでない臨床的なリアリティのある一冊

この本のコラムに「精神科医って近寄りがたい?」という項目がありますが、確かに結構そういう人が一定数いる印象はあり、自分が働く病院の精神科の先生も一部の方は、そもそもあまり前向きにこちらの相談にのってくれない側面もあったりします。ただ、内科疾患の併存疾患として精神疾患を抱える人は多く、需要は大変大きいので、積極的に関わって欲しい場面は非常に多いです。

 

筆者は総合病院の精神科医という経験を生かして本書を書いており、内科医の視点から見たときに臨床的にリアリティのある内容が多く、類書にはなかなかない特徴となっています。

 

臨床で精神疾患との鑑別や精神疾患の合併も多い神経内科医は、ぜひ一度読むことをお勧めします。

マルティン・ハイデガーの『存在と時間』に入門してみる⑦

今回はようやくタイトル回収となる、存在と時間性についてみていきます。

 

前回までは現存在の全てを本来的な生き方で考えるには、死への不安を受け入れ、先駆的覚悟性が必要である、という話まで見ました。それはどういう条件があれば可能になるの?という話になります。

 

気が狂わんばかりに難解な文を無理やり読み進めてきた本記事ですが、今回で最後です。

 

目次:

 

 

前回までの記事はこちら↓

マルティン・ハイデガーの『存在と時間』に入門してみる⑥

マルティン・ハイデガーの『存在と時間』に入門してみる⑤

マルティン・ハイデガーの『存在と時間』に入門してみる④

マルティン・ハイデガーの『存在と時間』に入門してみる③

マルティン・ハイデガーの『存在と時間』に入門してみる②

マルティン・ハイデガーの『存在と時間』に入門してみる①

 

日常的な時間の扱い

ハイデガーは先駆的覚悟性を可能にする条件は「時間」であるとして、非本来的(=日常的)な時間の扱われ方と本来的な時間の扱われ方について説明していきます。

 

実際の『存在と時間』ではそれぞれ気分・了解・語り・頽落と時間性の関係について語っているわけですが、全般として日常的な時間の扱われ方がどうなのか。『ハイデガー入門』*1を参考にしつつ紹介してみたいと思います。

 

日常的には時間というのは誰しも共通した数値で表されます。

200X年 XX月XX日といえば誰にとっても同じ時点を指しますし、「1時間後にまた落ち合おう」と言われたら、その時間は同じものであるはずです。

 

しかしハイデガーに言わせるとそのように誰しも共通な客観的なモノとしての「時間」の扱い方は非本来的である、と言います。

 

例えば以前客観的な距離に関して述べたように、同じ数値で表される距離であっても、その人によって感じ方が違います。普通に歩ける人にとっての3mと足が不自由な人にとっての3mはまるで違うように感じるはずです。

 

同様に、時間の流れをあたかも一本の紐のようにつながった”モノ”としてみるのは本来的な見方ではないとします。 

 

本来的な時間としての「将来」「既在」「現在」

では、本来的な時間というのはどんなものなのか。「将来(訳語によっては到来)」「既在」「現在」と用語を付け直して、それぞれの本来的な意味を見直していきます。

 

まず、「将来」は先駆することであり、「自分が可能性に差し向けられていることの自覚」を指しています。死に対しての先駆や了解における企投で述べられたように、人間が可能性へと向けられながら存在している状態です。

 

次に「既在」は、「被投性を引き受ける」ことを指します。既になっている環境を受け入れること、自身の可能性が制約されていることを認めます。

 

そして、「現在」は将来と既在により自身の可能性を自覚的に担い、存在することを指します。

 

これらをまとめて、『ハイデガー存在と時間」入門』*2では次のように述べられています。長いですが引用します。

 

現存在は先駆的覚悟において、自分自身の可能性に開かれるという仕方で、おのれをそうした可能性へと差し向ける(将来)。そしてそうしたおのれの可能性への到来はそれ自身、おのれの「どうであったか」、つまりおのれが世界のうちに被投されているという事実の引き受けを意味する(既在)。この将来と既在は全体として、現存在が他ならぬ自分自身の可能性を担う事態を指している。そしてこのような自分自身の可能性とは、現存在がその時々において関わっている存在者に適切な仕方で応答する可能性を意味するので、そこでは現存在が存在者を隠蔽することなく現前させているのである(現在)。(『ハイデガー存在と時間」入門』より)

 

このように先駆的覚悟性を可能にするのは時間の概念だ!ということでタイトル通り『存在と時間』の関係性を導いています。ハイデガーのいう”存在”を可能にするのは時間、というわけです。それは言われればその通りかなと思います。上述した通り時間の概念がなければ先駆も、可能性の引き受けもできないわけですから。

 

ただ、結局のところ、これらは今までの話である「先駆的覚悟性が本来的な生き方だよー」というのをまとめ直したに過ぎないようにみえます。そこからさらに時間の概念を広げようとした結果、うまくいかずに『存在と時間』は未完に終わってしまうわけです。

 

未完のままに終わった『存在と時間

なぜ、未完に終わったのか。『ハイデガー存在と時間」入門』*2 の終盤で詳しく分析されています。

 

ものすごくざっくり言えば、先ほどの「将来」「既在」「現在」が統一されている状況を考えると、最終的にはあれだけ『存在と時間』の前半部分で嫌っていた主観・主体を想定せざるを得ないということなようです。

 

「存在」とは何か、ということを考えたときに、通常は「今」目の前にあるものを考えますが、そうではなく巡り巡って「将来」「既在」「現在」のすべてが統一された地平をハイデガーは想定したわけですが、そうなるとその統一されたものを見る側として主観や主体を思わず考えてしまいます。

 

前半部分では、デカルトとの違いを強調し、いかに独立した主観が誤っているかを説いてきたわけですが、時間性の概念を持ち込んだところ、そこがうまくいかなくなってしまったわけです。

 

1番最初の記事で述べたように、継ぎ足し継ぎ足しで作られた著作なので、もはや行き詰ったらどうしようもなかったのだろうなと思いますね。

 

完結しなかったにせよ、主観・客観にとらわれない現存在という概念を作り上げ来たことや、本来的な生き方という見方、死の本質直観など興味深い概念は今まで紹介してきたように多々あり、それがこの本の魅力だということは読んでいて伝わってきました。

 

あまりにも難解すぎて数%くらいしか理解できていないような気しかしませんが、ひとまずこれで読み終えたことにします。こういった本に一生をかけて研究していく人々は本当によくそこまでのめり込めるなと心から思いますね、、、。

 

「とりあえず読み始めたからなんか書かないと!」という思いで無理やり書いてきたので、理解不能な文が多々あったと思います。記事を読まれた稀有な方々には申し訳ありません。

 

またやる気がわいたらこういった本読んでいきます。

しばらくは無理そうですけど(汗

 

参考文献:

*1『ハイデガー入門』

 

*2『ハイデガー存在と時間」入門』轟孝夫著

現代数理統計学の基礎 3章 問10

統計検定1級ですが最近は解き方を1個1個細かくみるというより、過去問をどんどん解けるように練習中です。統計応用よりも統計数理の方が範囲が定まっているのでなんだか解いていると安心するという不思議な状態になっています、、、(汗

統計応用は知らないことが多すぎて不安です。

 

統計数理の問題を見ながら現代数理統計学の基礎の類題を解いているんですが、今回は変数変換で対数正規分布の期待値と分散をみていく3章の問10です。

 

まず、期待値から見ていきます。

E[X]=\int_0^\infty\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{(logx)^2}{2}}dx\\=\int_{-\infty}^{\infty}\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{t^2}{2}+t}dt\\=\int_{-\infty}^{\infty}\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{1}{2}(t-1)^2}\sqrt edt\\=\sqrt e

logx=tとして置換積分しています。

最後の式変形は積分の部分がN(1,1)の正規分布となっているので、全確率=1を利用して変形しました。

 

次に分散です。同様のやり方で、x2乗の期待値を求めます。

E[X^2]=\int_0^\infty\frac{x}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{(logx)^2}{2}}dx\\=\int_{-\infty}^{\infty}\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{t^2}{2}+2t}dt\\=\int_{-\infty}^{\infty}\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{1}{2}(t-2)^2}e^2dt\\=e^2

 

よって、分散は

V(X)=e^2-e

となります。

 

またY=logXで変数変換するとどんな分布になるかというと

f_Y(y)=e^y\frac{1}{\sqrt{2\pi}e^y}e^{-\frac{y^2}{2}}=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{y^2}{2}}

なので、標準正規分布に従います。 

心エコーを見直してみる『レジデントのための心エコー教室』レビュー

久々に医学書を買いました。

需要の少なさからなかなか感想を書く人もいないと思うので、せっかくなので感想を書いておきます。

 

 

 
 
脳梗塞の患者さんをみるときに基本的に高齢者が多いので合併疾患があることもよくあります。慢性心不全も多いですね。
 
重度なものは循環器内科の先生にお願いするわけですが、軽いものだと補液とか利尿剤とか調整してやっています。そんな時エコーの評価がある程度できると便利だなというところもあるのですが、研修医以降エコーの指導なんてないわけで、どんどんスキルが下がってきます。そんなわけでこの本『レジデントのための心エコー教室』を買ってみました。
 

見やすい図と大量の動画がわかりやすい

カラーで大判の本なので、とにかく図が見やすいです。心エコーの当て方やエコーそのものの画像、各心室壁の血管支配域など良い図が豊富に揃っています。さらに、ネット接続が必要ですが、電子版も存在しており(日本医事新報社に無料の会員登録が必要)これも便利な点ですね。

 

ネット上に動画があるので、紙書籍見ながら動画をみることもできるのですが、電子版だと直接リンクで飛べるのでさらに便利です。エコーはやっぱり動画があってナンボだと思いますので、例となる大量の動画は素晴らしいです。

 

複数著者のデメリット

この本を買うときは最初同シリーズである『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』をイメージして買っていました。が、全然違いました。

 

この本は大変わかりやすく、かつ本質的な部分を教えてくれる本でした。例えばレントゲンで何を見ているのか、CTでどういう病態がどう見えるのか。単著者なので、基礎的な概念からその応用まで一貫した説明であったことが印象的で、最初の方で学んだ知識を臨床に応用していく醍醐味を味わうことができる一冊だったと思います。

 

ところが今回の心エコー教室の本は複数著者となっているため、項目ごとに記載が分かれており、前半部分のエコーの見方や計測項目の説明が、どうしても教科書的な説明に近づきがちだと感じました。

 

やっぱりレジデントも他の内科医も臨床での活用に興味があって読んでいるので、最初の基本的な説明と後半の臨床的な実例をいかに結びつけるかがこうした実用本としては重要なんじゃないかなと思います。そういう意味では単著者だと全体の流れができていて良いですよね。書く側はさぞかし大変なのだろうと思いますが。

 

自分がこの辺の分野が知識不足だから、前半部分の教科書的内容の理解が足りなくてうまく読めてないのかもしれませんけどね、、(汗