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第二言語習得における文法

前回の話に引き続いて言語学習について

 

言語を学ぶ場合、文法っていらないという過激な教育論者もいますが
どちらかと言うと少数派のように思います。

 

大人が言語を学習するときは文法事項を知った上で文を書いたり
話したりしたほうが、例文のみから覚えていくよりは遥かに
応用が効くし、効率が良いでしょう。

 

よく赤ちゃんが言語を学ぶように、とス◯ードラーニングのCMとかで
言っていますが、母語を学ぶ場合は確かに文法なんて学びません。

 

日本語を習得した我々が「は」「が」とか助詞の使い分けや
動詞の活用形なんて学ぶでしょうか。当然学びません。

 

そこで出てきたのが言語学者ノーム・チョムスキーが説いた「普遍文法」という
考え方です。

 

簡単に言えば、文法は学んで得るものではなく
もともと生得的に文法のもととなるものが
脳に予め用意されているということ。

 

実際子どもはいちいち教えられない文法まで習得していることが
この説を説明する強い根拠となっています。

 

第二言語習得の場合はどうなのか、については次回書いてみます。

第二言語習得理論 インプット仮説と自動化モデルについて

個人的に言語学習に対しては何故か幼少期から非常に興味があって
小さい頃から洋画を字幕でたくさん観たためか何だか分かりませんが
英語に限らず、複数の言語を生涯のうちに学んでみたいと切に思ってます。
実際中々そういう暇がないのが困ったところですが、、

 

そこで第二言語習得(Second Language Acquisition)の研究には
結構興味があって、言語関係の本も買ってみたりするのですが
中々実際への応用も難しいです。

 

ただ最近ネットのレビューをみて買った白井恭弘『外国語学習に成功する人、しない人ー
第二言語習得論への招待 岩波書店』は分かりやすくかつきちんと専門的な内容
であったので言語学習に興味がある人にはぜひオススメしたいです。

その中からまず言語習得理論における有名なクラッシェンの「インプット仮説」について
紹介します。

 

・インプット仮説とは

「言語はメッセージを理解することで習得される」
非常に簡単な理論ですが1970〜80年代の言語学習に大きな影響を与えたと
されています。
本文中には以下の例が示されています。

”一人は、友人の姪で、なかなか話し始めなかったのですが、初めて言ったことばが、「おかあさん、夕陽がきれいだねえ」だったそうです。もう一人は、アメリカ人の友人の弟で、彼の家族は当時、日本に住んでいて、友人の弟は日英語両方を聞いて育っていたのですが、日本語も英語も話し始めないので心配していたところ、ある日突然、日英語両方を流暢に話し始めた、という話です”

あくまで一例であって、全ての人やこれから言語を学ぶ成人に適応されるかは
異なるように思いますが、確かにインプットだけで言語が学習されていることを
示しています。
ただこの仮説はインプットにより言語は無意識的に習得されるもので
意識的に学習するものでは習得できない、という極端なものです。

 

・自動化モデル

そこで上記の理論に対して出現したのが自動化モデル。
実際に本や授業などで意識的に言語を学んで話せるようになった人もいるわけで
それを根拠とするのがこの考え方です。

例えば車の運転や自転車の運転など、いわゆる手続き記憶のようなものは
ほとんど意識せずに自動的に行われます。
これと同様に言語についても無意識的に使用されるようになるまで
学ぶ(自動化する)ことが言語習得に結びつくのではないかという理論です。

個人的にはこちらのほうが理にかなっているように思いますが
ただ確かに、自動化しようと思ったもの以外も知らないうちに
表現できるようになっていたりするものです。。
意識と無意識ということについてはまだまだ言語学習においても
解明が必要なようですね。

 

2020/7/18追記:新しく内容を増やして記事を書き直しました

第二言語習得論/クラッシェンのモニター・モデルについて【英語など言語学習者向け】 - 脳内ライブラリアン

ブログを書くことを習慣づける方法②


引き続き『僕たちは習慣でできている』より引用していきます。

『STEP 20 毎日やるほうが簡単』
『STEP 21「例外」を即興で作らない』

これは確かにな、と納得させられた方法です。
著者によれば『意識を呼び出さず、「ほとんど考えずにする行動」』それが習慣としています。
毎日やっていることであればより、ほとんど考えずにできるでしょう。

例えば朝顔を洗う、歯磨きをする、朝ご飯を食べる、なんてことは
毎日毎日繰り返しのことであって意識してやろうとすることは全くありませんし
それをやるために頑張る必要も全然ありません。

毎日繰り返すことでこうした行動と同じく負担なくやれるようになる、ということですね。

ブログを毎日内容を考えて書くというのは確かに楽なことではないんですが
繰り返しやっていたら、、、自動的に取り組むようにはなるのかもしれません。

次のステップの『STEP 21「例外」を即興で作らない』は毎日やると合わせて重要なtipsです。
今日は疲れたからいいか、今週は忙しいからいいか、、、、というのが続くと
今回のように気づいたら一か月更新が止まったりしてしまいます。

例外をすぐに作らない。これもひとつの習慣化の鍵と言えます。
短くても手抜きしてでもとりあえずやってみることが大事なのでしょう。
そんなわけでしばらくまた頑張ってみようと思います。

ブログを書くことを習慣づける方法 ①

前回ブログを継続する方法と銘打っておきながら早速更新期間が
空いてしまいました。
風邪ひいたりしていて、普段の生活が辛かったので、、という言い訳も
できますが、もう一度ここで懲りずにブログを続けるための方法を考えたいと思います。

 

先日読んだ本で、これはブログを続ける習慣づけに役立つし非常に面白い、と思ったのが佐々木典士「ぼくたちは習慣でできている」(ワニブックス)。
フリーライターさんで「ぼくたちにモノはいらない」というミニマリストについての本も書かれている方ですが、前作は読んでいないものの、今作を読んだだけでも中々のインパクトを受けました。

 

・今回ブログを習慣づけられなかった理由

 

先ほどの本には習慣をつくるための50のステップという章があります。
50って多すぎるでしょ、と思ったのですがこれが一つ一つ読んでいると
なるほど納得できるtipsがたくさん書かれています。
いくつか引用しつつ自分の状況に当てはめてみたいと思います。

 

『STEP13 とにかくハードルを下げる』
習慣をつくるためには「距離と時間」、「手順」、「感情」を考慮する必要があると
書かれています。それを調整することでその行為を始めるまでのハードルを下げることができます。
考えてみると、ブログを書くこと自体はiPhone, iPad, PCと確かにどこでも
できるのですが
・PCのはてなブログの起動が遅すぎて書くまでの手間が大きい
iPhone, iPadはタイピングに時間がかかる
というのが手順という点においてハードルになっていることに気づきました。
また
・たくさん書こう、いい文章を書こうとしすぎる
ということがブログを書くにあたって、プレッシャーに勝手にしており
更新への感情のハードルになっていたと思われます。

1つ目に関してはPCやipadのキーボードで打ち込んでブログの構成画面にコピペする
という手段を取れば少しは改善するように思います。
2つ目に関してはとりあえず最初のうちは気にしないことにしました。。

 

まずはこうしてハードルを下げることから始めていきます。
続きます。

【書評】脳が認める勉強法 ベネディクト・キャリー著 花塚 恵訳

勉強法の本というと常に本屋で平積みにされているくらい多くあって

かつ人気の本ですが、この本は他の勉強法の本とは「科学的根拠」という点で

一線を画しています。

 

勉強法の本では例えば「東大生の認める~」「ハーバード大卒の~」

「起業して~万円稼ぐ人の~」というように、一般に成功者とされる

学歴・職業の人のいわばcase study(一例報告、よくてもあるグループで

ひとまとめにした程度)が多くあります。

 

こうした本はあくまで個人例であるので普遍性にかけることと

自分に適応できないかもしれないということが問題点として存在します。

適応できない、というのはつまり自分のなりたい目標ややりたいことと一致するか

どうかで、別に東大生やハーバード大学卒になりたいわけでもなければ

あんまりそういった勉強法を特別視する必要性もないと思います。

 

その点本書では、それぞれの勉強法の根拠を過去の研究にまでさかのぼって丁寧に

根拠となる論文・研究を洗い出しています。例えば「エビングハウス忘却曲線

は非常に有名な記憶に関わる研究ですが、そこで使われた記憶するものって

何だったかご存知でしょうか。さらに忘却曲線の経過に沿わない場合もある

というのは知っていたでしょうか。本書にはこれらの内容についても

詳細に触れられています。

 

第1章では脳自体の記憶するシステムについて触れ、その後記憶力を高める方法、問題解決するためのひらめきを生み出す方法、また学習における無意識の力、と話が進められていきます。どんな内容の勉強をする人でも幅広く応用できる、普遍的な知識が詰め込まれており、自らの勉強方法を見直してみたい、そんな学生から社会人まで強くお勧めできる良書でした。

blogを毎週更新するためには

今度こそ継続して書こう、と思いながらまたブログを書く間隔が空いてしまいました。

ブログ書くのってなかなか持続できないなあ、なんとかならないかなあ

というのを考察したのが今回の記事です。

 

ネット上のブログをみると、最初のうちだけで止まってしまっている人は一杯います。

逆にすごく長く続いて、書籍化までされているような人もいます。

書籍化されないまでも長く続いているブログであれば活発な意見交換がなされていることが多いです。

どうして長く続けることが難しいんでしょうか。

 

ブログなどでアウトプットをすること、は一番効率の良い勉強法であるといわれています。それにもかかわらず、アウトプットの継続ができない。

自分の場合、理由としてこんなことがありました

 

・書くメリットがはっきりしない

・書く内容がみつからない

・ブログを書く時間がない

 

そんな悩みを本から学びつつ、具体的に解決法を調べてみました。

 

目次:

 

 

書くメリットがはっきりしない

ブログを書く意味って何でしょうか。

 自分の場合は読書で学んだことを、つなげる先が見つからず

その知識をどうにか深めたい、ということが最初に浮かんだことでした。

 

「ただ読む」ということは、文章を書くことと違って、楽です。

時間もかからない、構成に頭を悩ませることもない、批判されることもない。

しかし、それって意味があるって言えるんでしょうか。

その内容をもとに何か議論をしたり、文章を書いたりと外に出していくことで

初めて自分に影響を与えているといえるでしょう。 

 

またアウトプットをすること自体が冒頭に書いた通り、学習・記憶の面では

優れています。コロンビア大学の心理学者による研究では、本に書かれた

人物プロフィールの暗唱を「覚える時間(インプット)」と

「練習する時間(アウトプット)」を指定し、こどもたちにやらせたところ

約40%をインプットに割く(年長児では30%)場合が最も成績が良かった

とされています。全くほかの学習内容でも同様とは限りませんが

アウトプットの機会を多く設けることが重要であることは間違いないと思います。

 

書く内容がみつからない

普段の仕事でなかなか時間に追われて書く事がみつからない

頻繁に更新しようとすると何を書けばいいか困ってしまう

 

こういった疑問に対しては『20歳の自分に受けさせたい文章講義』という

本がうまく答えてくれました。

 

ベストセラーとなった『嫌われる勇気』のライターである古賀史健さんの本なのですが

文章を書こうと思ってかけない、そんな人へのアドバイスが詰め込まれています。

 

その中では文章を書く、ということは

伝えたい頭の中のぐるぐるを翻訳する、ことだと書いてあります。

どういうことなのか。

 

例えば自分が「この症状はある病気を診断するのにとても役立つ!ぜひ診断に役立ててほしい!」という医学的な知識を人に伝えようとした場合。

普通の患者さんに伝えようと思ったら、専門用語は使わずに噛み砕いて

書く必要があります。さらにどれくらい症状が続いたら受診するとよいのか

どんな検査をされるのか、どこの科を受診するのか

といった情報も書くとより自分の目的が達成されやすいでしょう。

 

逆に同業者であれば専門用語を使って簡潔にまとめつつ、

ほかにどんな病気が紛らわしいのか、どんな検査が診断に有用なのか

その情報の根拠となる論文はどれなのか、などを伝えると

この情報が「役立つぞ!」ということをよりうまく伝えることができます。

 

つまり、自分の頭の中の伝えたいこと(=ぐるぐる)を文章にして

「読者」にわかるように言葉を選ぶ、ことが文章を書くということなんです。

 

こうなると「読み手」と「伝えたいこと」を自分に問いかけていけば

自ずと言葉は出てくるのではないでしょうか。

 

ここで言葉にしたときに、自分が伝えたかったことを見直すことで

自分の中にある情報を再構築・再発見・再認識

することが書かなければ気づかなかったことに

気づくことができる、という点で一番の学びの機会になるのだと思います。

 

ブログを書く時間がない

 これには2パターンの理由があるように思います。

一つは書くことにあてる時間がもったいないと感じてしまう場合

もう一つは書く時間自体が本当にない場合

 

時間がもったいない場合というのはつまり他の行動に比べて

書くことの優先順位が低いということに他なりません。

 

確かに書くことは時間もかかるし、レスポンスもあるかどうかわからないし

あえてそれをしなくても生活はおくれるし、やらなくてもいいことかもしれません。

 

ただ、書くことは自分の伝えたいことを人に伝わるように整理して論理づけて

考えていくことであり、せっかくの自分の考えや知識をそのまま

誰にも伝えようとせず押し込めておくのはもったいないのではないでしょうか。

 

意外と世の中みんな同じようなことで悩んだり、同じようなことでつまづいたり

している人は多くいるはずです。

そうした人の役に立つことはあるでしょうし、場合によってはお互いに刺激して自分の役に立つこともあるかもしれません。

そう考えるとふと自分が思ったこと、程度であっても書く価値はあるものだと

思います。

 

また、もう一つのパターンの短い時間しか残されていない場合はどうするか。

結構自分は今回の文章にも時間がかかってしまいましたが、書こうと思えば

短い文章でも書けるんです。

といってただのツイッターではそれだけで書く能力が磨かれるわけではないので

最低限の構成要素として、主張・理由・根拠の3本立てで書くのはどうでしょうか。

論理的な文章にはなると思います。

 

ちなみに長い文章を書きたい場合でも長時間の空きは必要ありません。

人間の集中力は意外と思っているほど長く持たないようです。

5-10分程度であれば集中は十分保てますが30分,60分となってくると

どんどん集中力は低下します。

 

その根拠として最近の研究では分散学習のほうが効果が高いことが

証明されています。短時間に様々な分野の勉強をして、毎日繰り返すほうが

一日で長時間一つのことに取り組むよりも成績の上昇がいいことがわかっています。

文章についても少しずつ構築していったほうが、書いた内容を深く学べる

ことでしょう。

 

 

 参考文献:

『脳が認める勉強法 「学習の科学」が明かす驚きの真実』

ベネディクト・キャリー著 ダイヤモンド社

『ムダにならない勉強法』

樺沢紫苑著 サンマーク出版

『20歳の自分に受けさせたい文章講義』

古賀史健 星海社新書

脳梗塞tPA治療の時間にまた新しい変化が NEJM "MRI-Guided Thrombolysis for Stroke with Unknown Time of Onset"

さて今日から神経内科学会が開催されており、北海道に来ております。

 

脳卒中の講演で話されていたのですが5/16付けのNEJMから

tPAの治療適応時間を揺るがす新しいエビデンスが出て来たようです。

 

MRI-Guided Thrombolysis for Stroke with Unknown Time of Onset”という論文ですが

概要としてはwake up strokeと呼ばれる最終健在がよく分からない脳梗塞に対して

MRIでdiffusion highだがFLAIRで異常が描出されない場合に

tPAをうったところどうなるか、という研究です。

 

最終健在がむしろ4.5時間以上ではっきりしている場合はうっていません。

結果としてはmedian mRSがtPA群で1、placebo群で2という結果で

副作用は有意差なくやはりtPA有効だったようでした。

 

これはまた救急隊とのやり取りがややこしくなりそうですね・・・。

ガイドラインも改訂されるのでしょうか。

神経内科医の仕事がまた増えていきますね。