脳内ライブラリアン

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BMI 35以上の患者では、超音波ガイド下の腰椎穿刺で成功率が上がる

 今日は専門の話ですが、脳神経内科医に実用的で面白い論文を読んだので紹介します。

 

アメリカの脳神経内科学会であるAmerican Academy of Neurologyの出すNeurology誌の中でのNeurology clinical practiceに先月掲載された論文です。

Ultrasound-guided lumbar puncture improves success rate and efficiency in overweight patients | Neurology Clinical Practice

 

肥満患者に超音波ガイド下に腰椎穿刺をしてみたら成功率が良かったよ、という話ですね。

 

そもそも、超音波ガイド下の腰椎穿刺ってなんやねんと思ったのですが、超音波を事前にあてて、腰椎間を同定し、マーキングすることのようです。恥ずかしながら未だかつて聞いたことがありませんでした。

 

確かに体重の多い患者さんでは腰椎の棘突起が触れにくいので頑張って深く押して何とか成功させてた感じがありますが、考えてみれば超音波でみるというのは合理的な選択肢ですね。

 

具体的な論文の内容は盲検なしのランダム化比較研究です。PICOで紹介すると

P: BMI 35以上の腰椎穿刺が必要な患者82名

I: 超音波ガイドを使用して腰椎穿刺

C: 超音波なしで腰椎穿刺

O: 腰椎穿刺の成功率、触診開始~穿刺成功(髄液が出始めるまで)の時間

 再穿刺回数、神経根痛の有無、トラウマタップになったかどうかなどなど、、、

 

他に患者側の苦痛などもアンケート調査しています。

 

ちなみに穿刺をするのは卒後2-4年目のレジデント16名で、事前に60分の腰椎穿刺のレクチャーを受けます。超音波ガイドの説明は以下の動画で行われたそうです。分かりやすいので参考になります。

 

www.youtube.com

 

で、結果はどうだったか。コントロール群vs超音波ガイド群の順で書くと

成功率: 68.3% vs 92.7%(p=0.011)

必要な時間:37.63±12.77min vs 17.02±8.86min(p=0.008)

穿刺回数:11.05±4.87 vs 4.10±3.15 (p=0.017)

*平均値±SDで表記

と見事に差がつきました。

 

穿刺回数とかみると、実体験から考えたら、かなり刺してるな、、、と感じるわけですが、あくまでレジデントが難易度の高い肥満の患者に穿刺しているわけでなので、成功率がこれだけ叩き出せれば十分かなと言う気がします。

 

過去の研究では超音波ガイドの効果が否定的だったりしていたようですが、肥満患者に限定して人数を多く集めたのがカギだったようです。つまり、普通の体格の人ではあまり差がでない可能性があります。アメリカは肥満率も高く、今回の研究の体重も中央値が90kg超えてます(!)ので日本よりも必要性が高いのでしょう。

 

今度体重の多い患者さんがいたら、ぜひ使ってみようと思いました。