脳内ライブラリアン

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検査による確率変動の算出方法 -尤度比と検査前後確率/オッズについて-

医師が診断をするときにどのように

その病気らしい/らしくない、を判断していくのか。

具体的な確率で数値化することは情報が揃っていればできます。

 

ただ診断をつけるときにその疾患である確率を

実際の診療で細かく計算したり、イメージすることはないのですが

症例報告を書いていくうえで、厳密に詰めないといけないなと

感じて、個人的にまとめたかったので書きます。

 

医師が診察してある病気を疑い、診断をつけるイメージとしては

基本的にはその病気である事前確率

(年齢や性別、疾患の発症率・有病率からある程度推測)

に対して問診や診察、検査で

よりその疾患らしい所見があれば、確率が上昇し

否定的な所見があれば確率が低下します。

 

ほぼ問診だけで確定できる疾患や

検査だけで確定される疾患もありますが

基本的にはどれも組み合わせて詰めていく必要があります。

 

そこで、どの程度検査(問診や診察も含む)前後で確率が変動するのかを

イメージだけでなく正確に算出する方法があります。

 

それが確率をオッズに変換していく方法です。

 

事前知識として感度・特異度・陽性尤度比・陰性尤度比については

ここで非常に簡易にまとめてあるので参考にします。

1-1. 検査精度 | 統計学の時間 | 統計WEB

 

検査前確率をオッズにする

まず検査前確率を想定します。

これは正直正確には算出できないことが多いので

あくまでイメージするしかないです。

 

この検査前確率を検査前オッズに変換します。

オッズというのはある事象が起きる確率をpとしたとき

\frac{p}{1-p}です。

よって

検査前オッズ=\frac{検査前確率}{1-検査前確率}

となります。

 

検査前オッズに尤度比をかける

次に検査前オッズに尤度比を掛けます。

検査が陽性であれば陽性尤度比、 陰性であれば陰性尤度比を掛けます。

多くは検査の研究によって出されていることがあります。

 

数値の目安として陽性尤度比は5~10ならまずまず、10以上はかなり有用

陰性尤度比は0.1~0.5ならまずまず、0.1以下はかなり有用と言えます。

 

ちなみにコロナウイルスPCR検査を

感度60%, 特異度95%と想定して計算すると

陽性尤度比12, 陰性尤度比0.42と陰性の場合は微妙なことが分かります。

 

この尤度比をオッズに掛けることで

検査後オッズが出ます。

検査前オッズ×尤度比=検査後オッズ

 

検査後オッズを検査後確率に戻す

最後は最初と逆にオッズを確率に変換します。

検査後オッズ=\frac{検査後確率}{1-検査後確率}

式を変形して

検査後確率=\frac{検査後オッズ}{1+検査後オッズ}

となり計算ができます。

 

参考文献:考える技術-臨床的思考を分析する