脳内ライブラリアン

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医療、統計、哲学、育児・教育、音楽など、学んだことを深めて還元するために。

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up to dateから学ぶコロナウイルス

コロナウイルス流行が世間を騒がせていますが

こういった流行になると必ず正しい知識とそうでない知識が広がります。

 

というのも、医学的に根拠のある正しい知識というのは

その根拠を確立するのに時間を要するので、こういった急激な流行では

なかなか広がりにくい。

 

そこで今の時点で確かな情報を探すとなると

医療従事者の中でも色々な方法があると思いますが

個人的によく使うのはup to date

 

アメリカの医師バド・ローズが1992年から始めた医療情報サービスで

非常に広範囲の医学的な情報が専門家によってまとめられています。

常に最新情報にup to dateされていくのが特徴で、最新の知見に基づいて書かれるため

「この患者さんに今一番いい治療をするにはどうすればいいのか」という疑問に

答えてもらえます。最高ですね。

 

しいて悪い点を挙げるなら米国準拠なので日本でできない治療があったり

データが日本人のものでないことも多いことでしょうか。

あとは当然ながら有料です。

医療機関だと病院単位で購読していることも多いです。

 

コロナウイルスについてもさっそく更新されているようで

トップ画面をみるとわざわざnew topicとして知らせてくれています。

そこで、今回は簡単にまとめてご紹介します。

 

疫学

武漢市が発生源であり、2019年末にはすでに中国国内で

3万人以上の報告がされています。」

(ちなみに武漢市の人口は1108万人ほどのようです。

 数が日本の市のイメージとは大違い)

「ウサギ、蛇などの動物も食材として扱っている海鮮市場が発生初期と

関連していると考えられています。」

 

ウイルス

「今回の感染原因となっているNovel coronavirus(2019-nCoV)は

ベータコロナウイルスの一種です。」

過去に感染で騒がせたSARS, MERSと同じ種類ですね。

一般的な風邪もコロナウイルスで起こることがありますが、別の種類になります。

 

臨床的な特徴

◆潜伏期間

「感染後14日とされており、家族感染の例では3-6日間で熱・呼吸器症状が出たとされています。確定された2019-nCoV患者10例の分析では5日が平均でした」

 

◆症状

「発熱、咳、呼吸苦が一般的な症状です。小児では呼吸不全などの重篤な状態になることがあります。全体では20%が重篤な症状を起こし、致死率は3%ほどとされます。

死亡例は合併症がもともとある方が多いです。」

 

評価・診断

「CDC(United States Centers for Disease Control and Prevention:アメリカの疾病を予防・コントロールする政府機関)による基準では以下の患者さんを2019-nCoV感染疑いとしています。

 

①熱+下気道症状(咳、息切れ)+14日以内に2019-nCoV患者に接触

②熱+下気道症状+発症前14日以内に湖北省にいた

③熱+下気道症状+入院が必要な状態+発症前14日以内に中国にいた」

 

潜伏期間からすると妥当な範囲なのでしょう。

たまに症状も全然違ったり、全く期間も過ぎているのに

医療機関を受診される方がいますが

普通の医療機関ではそもそもすぐに検査ができないのと

そういった方がたくさんいると診療に影響がでるので気を付けてください。

 

診断は鼻のどの粘膜をぬぐった液もしくは痰などからPCR法という方法で

コロナウイルスを検出することで行われます。

 

治療

 基本的にはウイルス性の肺炎の場合、全身状態を整えるしかありません。

ステロイドを使用する、というのは少なくとも

up to dateでは推奨されていないようです。

重症例に対しての抗ウイルス薬ができるといいんですけどね、、。

 

予防

一般の人からするとこの項目が大事だと思います

 

「感染が疑われる患者はマスクをして気道からの分泌物を広げないようにする

感染をしないためには、手洗いや感染した人・死亡した動物などとの接触を避けること

 

症状のない人のマスクの着用は2019-nCoVの感染がある地域であっても不要

マスクの着用は感染予防における重要性が明らかでなく

また不要なコストや供給の問題を起こし得る」 

 

実際、今病院ではマスクの供給不足の影響で、1日1枚まで、などの

制限がつけられています。

 

 

ちなみに厚生労働省の一般向けQ&Aでは

 

"マスクは、咳やくしゃみによる飛沫及びそれらに含まれるウイルス等病原体の飛散を防ぐ効果が高いとされています。咳やくしゃみ等の症状のある人は積極的にマスクをつけましょう。
予防用にマスクを着用することは、混み合った場所、特に屋内や乗り物など換気が不十分な場所では一つの感染予防策と考えられますが、屋外などでは、相当混み合っていない限り、マスクを着用することによる効果はあまり認められていません。"

厚生労働省HPhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html)

 

と記載されています。

症状のない人はつけてもいいかもしれないけど、そこまで強く推奨しないよ

というニュアンスを感じます。

少なくとも感染のリスクや症状がある方でなければ、不要なのではないでしょうか。

 

ここまでマスクが不足している状況でありながら

先日名古屋市営地下鉄に乗っていたところ、アナウンスで

「愛知県内でコロナウイルスの感染が確認されています。

外出の際は、手洗いやマスク着用をしましょう。」

という趣旨の放送がなされていて、市の行動であるとしたら

がっかりする話だな、と感じました。

 

意味のない過剰防衛をしないよう、公的機関の情報を

しっかり確認したいところですね。

 

 

参考文献:https://www.uptodate.com/contents/novel-coronavirus-2019-ncov