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現代数理統計学の基礎 6章 問10-2

気を取り直して引き続き6章の問10(2)。

 

これがなかなか面倒くさい問題ですね。

まずは同時確率密度関数で式を表します。

p.104より順序統計量の同時確率密度関数

n!×それぞれの確率密度関数の積なので 

 

f_{{x_{(1)}},{x_{(2)}},...,{x_{(n)}}}(x_{(1)},...,x_{(n)})\\=n!\frac{1}{\sigma^n}exp\{-\frac{n}{\sigma}(x_{(1)}-\mu)-\frac{1}{\sigma}\sum_{i=2}^n(x_{(i)}-x_{(1)})\}I(x_{(1)}\gt\mu)

 

となります。

ここで問題に合わせて変数変換します。

 

z_1=\frac{x_{(1)}-\mu}{\sigma},z_2=\frac{x_{(2)}-x_{(1)}}{\sigma},z_3=\frac{x_{(3)}-x_{(1)}}{\sigma},...,z_n=\frac{x_{(n)}-x_{(1)}}{\sigma}

 

X=の形に書き直すと

 

x_{(1)}=\sigma z_1+\mu, x_{(2)}=\sigma z_2+\sigma z_1+\mu,...,x_{(n)}=\sigma z_n+\sigma z_1+\mu

 

となるのでヤコビアンを求めると

 

J((z_1,z_2,...)→(x_{(1)},(x_{(2)},...)=\begin{bmatrix}\frac{\partial}{\partial z_1}(\sigma z_1+\mu)&\frac{\partial}{\partial z_2}(\sigma z_1+\mu)&...\\\frac{\partial}{\partial z_1}(\sigma z_2+\sigma z_1+\mu)&\frac{\partial}{\partial z_2}(\sigma z_2+\sigma z_1+\mu)&0&...\\...&...&...\end{bmatrix}\\=\begin{bmatrix}\sigma&0&0&...\\\sigma&\sigma&0&...\\\sigma&0&\sigma&...\end{bmatrix}\\=\sigma^n


この結果から変数変換をして
目的である「指数分布とχ2乗分布の積にわける」=
「独立かつそれぞれの分布に従うことの証明」をします。

f_z({z_1},{z_2},...,{z_n})=n!exp\{-nz_1-\sum_{i=2}^nz_i\}I(0\lt z_1)I(0\lt z_2\lt z_3\lt...\lt z_n)\\=ne^-n{z_1}I(z_1\gt 0)・(n-1)!exp(-\sum_{i=2}^nz_i)I(0\lt z_2\lt z_3\lt...\lt z_n)

前半の式
ne^{-n{z_1}}I(z_1\gt 0)
は指数分布に従うことが明らかなので
後半がχ2乗分布に従うことをモーメント母関数を用いて示します。

M(t)=E[e^{t・\frac{2T}{\sigma}}]\\=E[e^{2t・\sum_{i=2}^nz_i}]\\=\int_0^\infty dz_2\int_{z_2}^\infty d{z_3}...\int_{z_{n-1}}^\infty d{z_n}・(n-1)!e^{t・\frac{2T}{\sigma}}・e^{-\sum_{i=2}^nz_i}

(公式の解答では積分の左から二つ目が
z3になっていますがz2の誤植だと思います)

これを右端から順番に積分してみると


\int_{z_{n-1}}^\infty・e^{-2t\sum_{i=2}^nz_i}・e^{-\sum_{i=2}^nz_i}dz_n=\frac{1}{1-2t}e^{-(1-2t)z_{n-1}}


となり、z_{n-1}についても同様に繰り返していくと


E[e^{t・\frac{2T}{\sigma}}]=(n-1)!\frac{1}{(n-1)!(1-2t)^{n-1}}=\frac{1}{(1-2t)^{n-1}}


となります。
これは自由度2(n-1)のχ2乗分布の
モーメント母関数に等しいので、χ2乗分布に従うことが証明されました。

これで終わり。
Latexも多少はスムーズに書けるようになってきました。