脳内ライブラリアン

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医療、統計、哲学、育児・教育、音楽など、学んだことを深めて還元するために。

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第二言語学習におけるi+1レベルとは

「僕たちは習慣でできている」を読んでからはかなりコンスタントにブログの更新も

できるようになりまして、個人的には嬉しい限りなんですが

それに反してなかなか進まないのは英語学習。

英語に関しては中高での学習と3ヶ月ほどの留学経験で日常生活に困らない程度にはできるんですが

医療の専門分野においてもう少し使えるようになりたいというのが本音です。

 

以前にも一部触れましたが、クラッシェンの提唱するインプット仮説においては

現在の言語能力の少し上である「i+1」レベルの難易度の学習をすると良いと

言われています。

 

インプット仮説自体が正しいかどうかはさておき、自身のレベルよりも少し上を目指す、という

考えは学習に関する事柄では普遍的に通じる理論であるように思います。

 

ただ、特に自分においてそのi+1レベルの教材を継続的に勉強することが困難だと感じるのは

学習自体に面白みが薄い、ということです。これは一般的にも当てはまるように思います。

 

例えば良く英語学習の方法として勧められるのはニュースサイト。

VOAあたりが難易度として適切だと思うんですが、いかんせん内容自体に興味が持ちきれず

続けられないことを何度も経験してます。

また逆に興味がもてる、映画やアニメと言ったものだとスラングなども多くて分からない

という場合があります。

 

興味はもてるけど、難しすぎるものになるのか

i+1の難易度に近いが、興味のないものになるのか

 

どちらを選ぶのか、どう工夫すべきなのかを次回から考察してみたいと思います。

救急外来診療におけるエラー③

前回紹介した認知エラーについての元論文は
Diagnostic Error in Internal Medicine
Arch Intern Med. 2005;165(13):1493-1499. doi:10.1001/archinte.165.13.1493
という論文で、同じ著者のMark L. Graberが書いている別の論文(↓)が
今日紹介するものになります。

 

Developing checklists to prevent diagnostic error in Emergency Room settings

Diagnosis (Berl). 2014 September ; 1(3): 223–231. doi:10.1515/dx-2014-0019.

 

救急外来において診断ミスを減らすためのチェックリストをつくろう、という論文です。

 

 


・救急外来の診療ではどれほどミスがあるのか

 

Backgroundに記載があるのですが、救急外来では10例に1例で
診断の誤りがあり、1000人に1人がdiagnostic errorによる害を被るとされています。

 

確かに救急外来では専門医がいない、検査も時間も限られているという状態から
診断がきっちりつく場合は当然少ないです。
そこで本論文が持ち出したのがチェックリスト。

 

 

・救急外来診療において確認すべきチェックリストは?

外科などの領域ではオペ前に確認するチェックリストが確立されていたり
ミスに対する対処にチェックリストが実際使われています。
外来での診療はそれとは異なると思いますが(前回挙げた「知識の不足」などは
そもそもチェックリストを用いても改善され得ない)エラーを少しでも減らす
という意味では役に立つかもしれません。

 

本文中で紹介されるチェックリストにはこんな質問項目があります。
Yesがついた場合はエラーが起きやすい状況といえます。

 

 

Are there "must-not-miss" diagnoses that need consideration?
「見逃してはいけない」疾患が考慮されていますか?

 

Did I just accept the first diagnosis that came to mind?
最初に浮かんだ診断を受け入れていませんか?

 

Was the diagnosis suggested to me by the patient, nurse or another MD?
その診断は患者、看護師、他の医師から提示されたものですか?

 

Is there data about this patient I haven't obtained and reviewed?
Old records? Family? Primary care provider?
まだみていないあるいは見直していないデータがありませんか?
過去の記録や、家族の話、プライマリケアドクターの情報はどうですか?

 

Are there any pieces that don't fit?
その診断に合わない部分がありませんか?

 

Did I read the X-ray myself?
レントゲンは自分で読みましたか?

 

Was this patient handed off to me from previous shift?

その患者さんは前の時間帯からの引き継ぎではないですか?

 

Was this patient seen in the ER or clinic recently for the same problem?
その患者はERもしくはクリニックに同じ問題で最近来てませんか?

 

Was I interrupted/distracted/cognitively overloaded while evaluating this patient ?
その患者を診るときに、何か邪魔がはいったり、気が散っていたり
認知機能に過度に負荷がかかったりしていませんでしたか?

 

Is this a patient I don't like for some reason? Or like too much?(friend, relative)
その患者何と無く嫌いじゃないですか?あるいは好きすぎたりしませんか?

 

 

中々面白いチェックリストだと思います。確かに診断の目が曇りそうな
シチュエーションが多いですね。
10%はこのチェックリストで診断が変わったようです。

果たしてどこまで役に立つのかはまだ証明されていませんが
こういったシチュエーションに陥っていると気づいたら、一瞬でも自分の
診断を顧みることが必要と思われます。

 

救急外来診療におけるエラー②

昨日に引き続き、診療におけるエラーのお話。
参考文献は「長谷川耕平・岩田充永 内科救急見逃し症例カンファレンス 医学書院」です。

 

大まかに分けて4つのエラーとそれに従ったタイプがあります。
知識→それによる情報収集→情報の処理→情報の検証
それぞれの過程での誤りに対応した種類分けです。


①間違った知識
知識不足による思い込み・・・CRP上昇はないから、髄膜炎ではない
スキルの不足・・・腱反射陰性(実はうまくとれていないだけ)

 

②情報収集のエラー
基本的な帰属の誤り・・・いつもの精神的な症状だろうと考えて診察を怠る

 

③情報処理のエラー
トリアージバイアス・・・トリアージナースの診断をそのまま信じる
ラベリング・・・アルコール中毒患者とレッテルを貼って患者を診る

 

④情報検証のエラー
アンカーリング・・・ある疾患だと思い込んで他の鑑別が挙がらない

 

知識不足による①は特に若手のうちは頻繁に起きているように思いますが
②も「研修医が所見をとってるからいいだろう」として怠る場合は自分もあります。
③はトリアージナースに限らず前医の診断に振り回されることは良くありますし
④は治療を始めてしまって中々他の可能性をきちんとみられないことはあります。

 

大事なのはこうしたエラーのあり方を知って振り返ることかな、と思います。
後になって振り返るのも重要ですが、こうしたエラーが起きやすいというのは
分かっているので診療の途中でもぜひ振り返りたいものです。


そこで、このエラーの分類の元になった論文を書いたStanford大学の先生の
別の論文もちらっとみてみたので明日紹介を書きます。

救急外来診療におけるエラー

さて、今日は1日救急外来診療でした。
うちの病院は他の周囲の病院と同様に研修医と自分たちのような後期研修医
さらに上級医が救急対応に当たるんですけども
やっぱり救急外来というのは何でもかんでも来るので
本当に入院時には診断が分からない症例というのも多いんですね。

 

ただ、「後医は名医」なんて言葉がありますが、後から後から情報が出るので
後々の対応をする我々のほうが診断には有利であることは間違いないです。

 

有利であるが故に研修医の対応をみながら、もっとこうするべきじゃないのかなと
思うことは度々あるんですが、どう振り返るのが適切なのか
どう学び直すべきなのか、をまだあまり検討したことがありません。

 

結局どれだけ本を読んだり知識だけつけても
個々の症例をきちんと学び直すこと以外に
医学の上達はないというのは先達をみていると確かなことなようです。

 

そこでそういったトピックをいくつかチョイスして書いてみたいなと思います。
誤った対応(エラー)が起きた際には何が原因となったのか
その振り返り方をまず学びます。
今回の参考文献は「長谷川耕平・岩田充永 内科救急見逃し症例カンファレンス 医学書院」です。

 


・診療におけるエラーとは

 

何が良くなかったのだろう、そう漠然と考える場合やはり

思考の癖が出て、問題の漏れがあったりするので難しいものです。

 

こうしたときに役に立つのは思考の枠組み。

問題を分類して整理すること、これが慣れないうちは最善の手段だと思います。

 

診療でのエラーは
無過失エラー no fault error
認知エラー cognitive error
システムエラー system error
の3つにわけられるとされています。

 

無過失エラーはその名の通り、医師に何も責任のないエラーです。
例えば患者が意図的に嘘の病歴をいう、前医からの情報が間違っているなど
防ぎようのないエラーのことを指します。これはどうしようもないものですね。

 

認知エラーは医師の思考の傾向による欠陥といえます。
例えば酔っ払いの患者が意識障害でやってきて、家族も「普段からよく
飲んでいつもこんな感じです」というのを言われ、ほって置いたら
実は硬膜下血腫だった。そんなバイアスの関わるエラーや、心電図変化があるのに
知識不足で読めていなくて異常なしと判断する、知識のエラーも含めます。
ここは次回また深く掘り下げます。

 

システムエラーは病院のシステム自体によるエラーです。
例えば引き継ぎの体制や検査を行う環境などが要因となり
個人というよりは病院全体の体制の問題となります。

 

個人単位で診療を振り返る場合、まず認知エラーを考え
正しい知識と判断を身につける必要がありそうです。

30年の縦断研究からみた新規抗てんかん薬の効果とは②

昨日は結局仕事で更新できず
ここのところ順調だった連続更新が一旦止まりましたが
まあどうにもならなかったので気にせずいきます。

 

今回は引き続き前回紹介したてんかんの縦断研究の論文の話。

 

Treatment Outcome in Patients With Newly Diagnosed Epilepsy Treated With Established and New Antiepileptic Drugs A 30-year Longitudinal Study

JAMA Neurol. 2018 Mar 1;75(3):279-286. doi: 10.1001/jamaneurol.2017.3949.

 

新規抗てんかん薬でも寛解率に変化がなかった、ということの他に
以前にも同じようなデータはありましたが、その患者にとっての
第一選択薬、第二選択薬、第三選択薬、第四、、、、とそれぞれ
薬剤を使っていった場合の寛解率の変化についても言及されています。

 

すると、1st regimenでは50.5%(820名)ですが
2ndで11.6%寛解率が増加するのみ、3rdではそれが4.1%、
4th以降は1%未満となっています。

 

初期に選択薬された薬剤で寛解しない場合寛解率はガクッと下がる
ということは知られていましたが薬剤の選択肢増えてきている割には
相変わらずなんだなあというのが正直な感想です。

 

今までに何剤か使用してきた人は確かに何を追加しても
変わらないことは多いですね。新規薬でピタッと止まる場合も
経験としてはありますが、、、取り立てて多いほどではないです。

 

そうなるとやはり寛解しない人というのは前回の話でいう
そもそもてんかんではない人とか薬剤の機序がそもそも現時点での
薬では効かないタイプという可能性は大いにありそうです。

30年の縦断研究からみた新規抗てんかん薬の効果とは

医療系と言っておきながらしばらく触れられていなかったので
たまには今年の読んだ論文について触れておこうと思います。

 

今回紹介するのはこれ
Treatment Outcome in Patients With Newly Diagnosed Epilepsy Treated With Established and New Antiepileptic Drugs A 30-year Longitudinal Study

JAMA Neurol. 2018 Mar 1;75(3):279-286. doi: 10.1001/jamaneurol.2017.3949.


JAMA Neurologyより以前から同様の研究を発表されている
グループから大規模なてんかんの縦断研究の話。

 

30年間自施設の新規に診断されたてんかん患者において
てんかん薬によって発作消失率(1年間発作なし)などのデータを調べています。

 

論文の主旨としては抗てんかん薬によって63.7%の人が発作消失(1年間発作なし)
を得られたとしていますが、これが実際1982-1992年のデータと変わりないとしています。

 

つまり、新規の抗てんかん薬がかなりの種類出ているにも関わらず
意外にも発作の消失率は改善していない、、、という報告なのです。

 

これは色んな捉え方ができると思います。
例えば
・新規薬は副作用は少ないが効果自体は既存の薬剤と変わらない
(ただ副作用が少なくてアドヒアランス向上するなら効果も上がって良い気がしますが)
・新規薬を臨床医が使い慣れていない(至適血中濃度も不明だし)
・難治性のてんかんが増加している(・・・根拠が特にない、高齢てんかんは増えていると思いますがデータによりますけどそこまで治療成績が悪くないはず)
・そもそも発作消失が得られない4割にはてんかんじゃない人がいる
あるいは既存の薬剤では効かない

 

昔のデータより改善していない、というのはやや残念な気持ちになりますが
副作用はせめて減っているんじゃないかと思いたいのは臨床医のエゴでしょうか。

第二言語を習得する場合、文法はどう学ぶのか

前回の記事では母語習得のときは文法を学ぶことは不要であることを
書きましたが、第二言語の場合はどうなのか。

 

個人的には基本的なこと、規則的に説明できる部分については必要と思ってます。

前回書いた通り当然ながらその方が効率がいいですし
文章の理解もより簡単に進みます。

 

ただ、文法といっても規則で説明できないものや(不規則動詞など)
感覚でしか説明できないような使い方というのもあると思います。

 

数詞なんかはそういう変化が多いように思いますが
例えば日本語における「匹」の数え方。
いっぴき、にひき、さんびき、よんひき、ごひき、ろっぴき
ななひき、はっぴき、きゅうひき、じゅっぴき
と数えますが、これって相当不規則な変化をしていますよね。

何でそうなるのかなんて意識したこともないくらい
自然に数えていますが説明しようと思うとかえって難しいように思います。

 

言語は基本的に無意識下に使えるようになる、というのが
最終到達点だと思っていますが
こういった説明しにくい不規則な文法や細かい複雑な文法になればなるほど
無意識下に使いこなすのは難しくなります。

 

これはどうするかと言えば、結局反復練習に他ならないと思うのです。
そしてそれにはやり方によらず膨大な時間が必要です。

 

事実、日本人が義務教育で英語を学んでいるのに話せない理由の一つが
圧倒的に時間が足りていないと指摘されていますが
言語の習得は本当に時間がかかるものだと思います。

 

以上のことから文法は基本的な事項は意識的に学んで
複雑なもの・不規則変化はとにかく時間をうまく割くことと
多量のインプット・アウトプットを行うこと(ここについてはいつかまた記載)
が必要だと思います。